私たちには、3000坪のオーガニックガーデンがありました。庭から生まれたものを庭に還すことを基本に、農薬は一切使わず、林の恵の腐葉土と草の灰と堆肥などで営まれる庭でした。
植物と虫と鳥と動物が、我を張らずにゆるりと育ち育てられる優しい庭でした。
ここから３冊のハーブの本と、多くの生活のレシピも生まれました。残念なことに、この夏、この庭は消え、造成され、別荘地に変わりました。植物たちは多くのボランティアの方々の手で分散して移植されました。庭は私たちの心をも耕してくれました。ふかふかの土は今、私たちの心の中にあります。さまざまの”種”も手の中に山盛りです。
庭を失って、何も失っていないことに気付きました。本や雑誌をご覧になって、この庭を楽しみにいらして下さる方、毎年訪ねて下さる方には、大変に申し訳なく思っています。でも、この”種”と日々の感動は、今のシンプルズの内と外に息づいています。私たちの「オーガニック・ガーデン」は見えるところ、見えないところに存在しています。
ですから、がっかりなさらないで、ここを見ていただきたいと思うのです。そして、ここには、より豊かな庭が生まれる予感も育っているのです。