花の時間


袋いっぱいのリンデンバウムの花をもらった。
彼は若い頃、南仏からこの地に来た人。
ふるさとに帰るように、時折この薬草店に笑顔と共にやってくる。

家族を得、仕事や友人にも恵まれ、今は自分の庭で懐かしい植物を育てる。
リンデンバウムという木が花をつけるには、子供が大人になるほどの時間がかかる。
彼の重ねた誠実な日々が、美しく香り優しい花を咲かせた。

萩尾エリ子 / simples