幸せと呼べたら


年を重ね、杖をつく人が
「すっかり弱った」と嘆きつつ、小道を歩く。
若者のグループは屈託なく楽しげで、
「こんにちは」が上手に言えた少年は
母さんにほめられ得意顔。

窓辺のクレマチスは白髪になり、
ハンショウズルの蕾はふくらむ。

緑深まり、風通る薬草店の一日。

萩尾エリ子 / simples