願いごと


バルトの国々を旅した折、北のハーブたちと出会った。
森や野に生き、人々の暮らしの中にあった。
私たちの混ぜるエルダーの祖国は、そこから遠くない。

窓辺にアオモジの蕾が開く。
やわらかな日差しに守られた花を愛でるひとときさえ、
叶わない人たちがいる。
花の女神に会えるのなら、杖をひと振りお願いしたい。
無垢の春が戻るよう。

萩尾エリ子 / simples