甘く、酸っぱく、愛しいもの


昔、青山で開いた店は“Apple Tree”という。
バックバー一杯の絵は、ぽつんと大きなりんごの木。
少し背伸びした私の、大人の空間だった。

今、朝食のりんごが私のビタミン。
身の丈の暮らし。
大きな大きなかご一杯のりんごがなくなるころ、
花霞みを連れて春が来るはず。
それまでは、冬の美しさ、気高さを存分に味わおう。

萩尾エリ子 / simples