朝露の記憶と


聖母マリア様のマント・西洋羽衣草と、
母の庭の薔薇をふわりと混ぜて。
乳香と没薬の粒を少し。

数えるほどしか作れない百里香。
かつて、ひと滴の露を抱いた葉と花びらはゆっくりと乾き、
今は香りの中で微睡む。

窓からの光に花びらが透ける。
初雪はまだ。

萩尾エリ子 / simples