静かに積もる


青々とした苔の上にも木の葉が舞う。
その中に菫のひと株が息づく。
そこはかつて木の椅子だった。
繰り返す季節を重ねて、草屋根も生まれた。
巧まないことの清々しさを知る。

春が来たら、あの菫は花をつけるだろうか。
時おりの風を、雨を、そして光を受けて、秋が降り積もる。

萩尾エリ子 / simples