柔らかく清らかな


瓶の底、あるいは袋の底に残る黄色い花芯を大地に播く。
薬草店だから、山ほど出る花の一部。
秋には、それは幼な葉を出し、雪に埋もれ厳冬を過ごした。
雨に打たれても、やがて背筋を伸ばす。

朝ごとにカモミールの花を摘む。指先にりんごの香り。風も甘い。
母なるハーブの偉大さ、そして慎ましさを今さらに想う。

萩尾エリ子 / simples