光、一枝


二月に戴いた桜の枝。その蕾は固い。
窓越しの光と部屋の温もりと人のまなざしに包まれ、薄桃色の蕾はゆっくりとふくらむ。

開いた花は淡く白。
年をかさねた友に一枝、母に一枝、深い悲しみを抱いた人の手掌の花束に。
それぞれの胸に淡き光を。仄かな希望を。

萩尾エリ子 / simples