春朝一刻

【写真】
雪はさらさらと降り続き、苗の育つハウスを潰した。
ナーセリーの主は暮らしの糧を、若者たちと語りあう場所を失くした。
彼は素手でポットに土を入れ、湧き水で緑を育てる人。
幾度も東北に花を植えた人。

やっと辿りついたハウスの下から、生きのびた苗が顔を出した。
失意の彼に笑みが戻る。
自然は厳しくて、時に優しい。
新たな出発は素朴でひたすらがいい。晴れ晴れとしたユーモアも忘れず。

春が霞む朝。
空気が少し暖かくなった。

今年の店頭に並ぶ苗は僅か。準備はこれからです。

萩尾エリ子 / simples