その日は

【写真】
病院の庭の香草を集め、少々の花を買い、ボランティアの友人と花束を作る。
毎年、緩和ケア病棟の家族会でテーブルを飾る。
小さな花束を集めれば、籠は花園になった。

見送った大切な人を偲ぶ日、家族の語る言葉は溢れるほどに豊か。
見えない傷は時間に、あるいは人に、ゆっくりと手当をしてもらおう。

手渡された花束をいとおしみ、「家族」はまた歩きはじめる。
ふわりと草が薫った。

萩尾エリ子 / simples