美しきは今

【写真】
「今、行かないと」。
その人は杖をたよりに木の葉舞う秋を歩く。
花の木の赤を見るために。
「来てよかった。来年はわからないから」。
終の住処をこの地でと思う年上の友。その気持ちは爽やかで切なくて愛しい。

たくさんの勇気を必要とする治療を受け入れた友には、地を彩る葉の写真を送る。
もう少し、この世にいたいと返事がきた。

光は明るく木々を抜ける。この世界は美しい。

萩尾エリ子 / simples