たくさんの雨が降り、草は伸び、思い出したように「夏」が顔をみせる。
青い空気が満ちる。
瓶の中の薬草や棚の精油たちは、自分の心に、身体のために、大切な人のために、密やかに手当てをする人を今日も待つ。
だれかのための贈りものを探しに来る人へ、植物で布を染め、お風呂のためのボンボンを作る。
ずっと昔に見た一枚の写真。パリの薬草店の戸棚に心ひかれ、ハーバルノートは生まれた。
建物は静かに美しくなり、たったひとつの場所になった。
ショップ名に“シンプルズ”を加えて、10年が経つ。
胸の内に、祝祭の小さな花火を上げよう。
蓼科の短い夏は、特別に輝く。
この夏もお待ちしています。
萩尾エリ子 / simples