ひと花に

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学生時代の友人と旅をした。
友人の友は、歴史ある温泉旅館を閉じ、今、静かに暮らす。

それぞれが、それぞれに痛みの日々を持ち、過ごしてきた。
こんこんと湧き出る湯と、海の幸が今日の恵み。
ずっと暮らしてきたからこその恵み。

金色の葉が降りそそぐ庭に、小春日和を友として、
一輪だけのデイジーが咲いた。
冷たく澄んだ大気の中、何故か心の奥は温かい。

萩尾エリ子 / simples