スタッフと通ったそのリストランテは、8月で閉店となりました。
人を送り、迎え、誕生日を祝い、ことあるごとに扉をあけました。
夕焼けの中を走り、小道の香草に迎えられ、満月に送られて帰る。
日常からほんの十数分、魔法の場所でした。
美しく滋味あふれる一皿は心の滋養、舌に残る味の記憶は幸せの記憶。
はじまりがあれば終わりが来る。だからその間が愛しい。
小さな穏やかな時間が愛しい。年を重ねて、少し解りました。
そして終わることは、はじまること。
この夏は如何でしたか。
萩尾エリ子 / simples