咲く

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その花は、義父の病室の窓辺を飾りました。
義父が逝き、庭の角に置かれた鉢は自然の光と露を受け、ひっそりと時を過ごしました。

秋風が吹く頃、枝の先にたくさんの固い蕾をつけていることに気がつきました。
暖かな部屋で、露はふくらんでゆきました。
冬の最中、仄かな香りを漂わせ、たわわな花は細い枝をしならせるほどに咲きました。

生かされて今日をある、それは心を包むような、いとおしい匂いと重さです。

萩尾エリ子 / simples