それはショップの床下から現れました。
肥料と思って開けた袋から出てきたのは、草木の灰。
以前の庭を閉じる日、ガーデナーの成嶋富男さんから託されたものでした。
今は亡き彼の手になる、あの庭から生まれた灰を、私はショップ再建の中、目の前のことに追われ、忘れていました。
胸は震え、熱いものが心に溢れました。
今の庭の精霊たちに、この灰を捧げよう。
よりゆるやかに、美しく心地よい庭に育つことを願って。
8袋の灰は、地と私たちの滋養となり、これから少しずつ、土に還ってゆきます。
萩尾エリ子 / simples