陽が輝き、雨が大地を濡らし、ときどきは雷なども鳴る。
緑は美しさを増し、庭は清しい香気に包まれています。
心も静かに満ちてゆく季節です。
戸口のクレマチスが美しく咲きました。
広い庭から、決して最良とはいえない場所に移され、年を重ねたクレマチスです。移植後の数年は、よるべない幼な子のようでした。
やがて隣りにメドウスウィートが植えられ、自生のキンミズヒキが育つにつれ、この草は少しずつ元気になりました。
ありふれたはずのクレマチスは、極々小さな花をぽつりと咲かせるものですから、人は特別な品種と思ったものでした。
季節は巡り、溢れる花は楚々とお客様を迎えます。
ここは幸せな居場所に変わりました。
待つこと、僅かに手を添えることを改めて教えてくれました。
強くて優しい、私たちの希望の花です。
萩尾エリ子 / simples