朝靄と夕暮れの空気に、ほんの1%ほどの‘春’が混ざっています。
桜の花びらよりも、淡い淡い春の気配です。
裏庭のスノードロップがは咲きはじめました。
思わぬ雪や、戻る寒気にもひるまない、たくましいエネルギーを持つ、小さな白い花です。
この花に続くのは、水仙、ムスカリ、ヒナギク、ラングワート‥‥
それぞれの優しい色を輝かせて、この庭に点在します。
企まない、緩やかな流れを持つ庭が、少しずつ形を見せはじめます。
スノードロップは、秘やかに、静かに、小さなファンファーレを鳴らしました。
私たちの庭へのまなざしも、ひたむきで、やわらかになる3月です。
萩尾エリ子 / simples