小道の角に、一本の花の木があります。
木のまわりに落ちた葉の姿も美しく、少々戴いては庭に播き、
一度は糸や布を染めるのです。
輝くような秋の色の中で、一冊の本に出会いました。
「オキーフの家」、ジョージア・オキーフという画家が、
98才までの40年間を過ごした家と、その周囲のお話です。
写真家と看護人の目から写し出される、オキーフという女性の生き方が、モノクロの写真と柔らかな言葉で綴られています。
驚くほど簡素な佇まい。光はふんだんに溢れ、見るものの胸を打ちます。
巡ったたくさんの季節を静かに心に蓄積させる。
身軽に、されど美しく、年を重ねることは至宝。
澄んだ光と共に、この秋も過ぎてゆきます。
萩尾エリ子 / simples