人目を惹く青色のラングワートの傍で、ひっそりと花をつけたスウィートバイオレット。
庭に手を入れることのできなかった年月の中で、生き続けたこの花に顔を近づけると、仄かな香りがします。
ニオイスミレ、花言葉は「控えめ、謙遜」。香りまでその通りです。
書棚から、紫色の背表紙の“The Language of Flowers”をとり出しました。
十数年前、ロンドンの古い香水店で、何気なく買ったものです。
著者の自筆のサインに気がついたのは、帰国してしばらくしてからのことでした。
そしてページを開くと、今も微かにオリジナル香水“ビオレッタ”の香りがします。
英国の旅で戴いた、愛しい贈りものです。
五月の旅に出られた方に、私たちが差し上げられるのは何でしょうか。
萩尾エリ子 / simples