シソはしっかりと実を結び、ススキの穂はふわふわになり、飛行の準備をはじめました。月光は透きとおっています。
風の又三郎がやって来たような、ざわざわ、どーどーと大きな風が吹く日に、青いクルミとトチの実が落ち、染色にと優しい人が、その実を運んでくれました。
トチの実の染液は赤味を増し、布は薄い杏色に染まりました。
構えることのない、淡々と美しい日が過ぎてゆきます。
植物たちの生命の交代や冬支度も、それぞれの流儀で行われていて、その秘やかな変わりように心動かされ、手を入れず黙ってもう少し、庭の様子を見ていたいと思うこの季節です。
萩尾エリ子 / simples