澄みきった水晶のように透明な空気の中を歩き、ぽつんと建つこのショップの扉を開けると、溢れるほどの香気が流れ出ます。
あらゆる季節が混じりあい、優しく溶けあい人を包みます。
私たちは、ガラスのビンから香草をとり出し、混ぜあわせ、お客様のご希望のお茶を作ります。心を温めることも、身体を温めることもできた時、それは何よりの喜びの仕事となります。
けれども、こうした季節のこの家が宿す馥郁たる香りこそ、“春”を待つ魂にするりと入ってゆく、最上のブレンドと私たちは思うのです。
萩尾エリ子 / simples